浴槽内の溺水は交通事故より多い。冬の入浴で起きること
入浴は毎日のことなので、危険だと思われていません。実際には、家の中で最も事故が起きている場面です。
何が起きているのか
暖かい部屋から寒い脱衣所へ移り、熱い湯につかると、血圧が短時間で大きく上下します。この変動で失神したり、心臓や脳の発作を起こしたりすることがあります。浴槽内で意識を失えば、そのまま溺れます。
高齢者の浴槽内での不慮の溺水による死亡は、交通事故による死亡を上回る水準で推移しています。 冬季に集中するのは、温度差が大きくなるためです。
今日からできること
- 入浴前に脱衣所と浴室を暖める(暖房、シャワーで湯を張る)
- 湯温は41度以下、つかる時間は10分までを目安にする
- 浴槽から急に立ち上がらない。手すりにつかまる
- 食後すぐ、飲酒後、睡眠薬などを飲んだあとの入浴を避ける
- 入る前に同居者へ一声かける。時間が長ければ様子を見に行く
道具と手すり
| 道具 | 介護保険での扱い |
|---|---|
| シャワーチェア、浴槽内いす、浴槽用手すり | 特定福祉用具販売(購入費の支給) |
| 壁に固定する手すり、段差の解消、床材の変更 | 住宅改修 |
| 簡易浴槽 | 特定福祉用具販売 |
| 入浴用のリフト | 福祉用具のレンタル |
自宅の風呂に入れなくなったら
介助があれば入れる場合は訪問介護、体を支えきれない場合は訪問入浴介護があります。デイサービスの入浴を使う方法もあり、こちらは送迎付きで、家族が休める時間にもなります。
入浴を嫌がるときは、理由を探してください。寒い、裸を見られたくない、手順が分からない、湯が熱い。「入りたくない」の中身が分かれば、変えられることがあります。
入る前に確かめること
風呂で具合が悪くなる人の多くは、入る前から条件が悪くなっています。食べた直後、酒を飲んだあと、熱があるとき、いつもより血圧が高いか低いとき。この四つは、日を改めるか、時間をずらしたほうが安全です。
血圧の薬を飲み始めたばかりのころは、湯の中で下がりすぎることがあります。長い時間ひとりで入る習慣がある人ほど、声をかける回数を決めておいてください。 返事が無いことに早く気づけるかどうかで、結果が変わります。
ひとりで入る人を、どう見守るか
同居していない親が自宅の風呂に入るとき、家族にできることは限られます。それでも、入る時間をだいたい決めてもらう、入る前と出たあとに電話やLINEを一本入れてもらう、という約束はできます。
風呂の戸の鍵を掛けない、という約束も要ります。中で倒れたときに、外から開けられないと助けが遅れます。戸を引き戸に替える、鍵を外から解錠できるものに替えるといった工事は、住宅改修の対象になることがあります。
家の風呂にこだわらないという選び方
手すりを付けても、またぎが高い、洗い場が狭い、脱衣所が寒い。家の作りそのものが合っていないことがあります。
そういうときは、デイサービスで入るという手があります。人手があり、床がすべりにくく、体を支える機械もあります。寝たきりに近い人には、浴槽ごと家に運んでくる訪問入浴介護があります。この記事では家での安全を書いていますが、危ない風呂に無理に入り続けるより、場所を変えるほうが安全なことは珍しくありません。 近くにどんな事業所があるかは、当サイトの市区町村ページで見られます。
出たあとにも、山がある
倒れる場面として多いのは、湯から立ち上がるときと、風呂から出たあとです。温まって広がった血管が急に冷えると、血圧が動きます。
出る前に湯船の縁につかまってゆっくり立つ、脱衣所を暖めておく、上がったら水分を取って少し座る。この三つで、かなり違います。「上がったあとにふらつく」と本人が言ったら、それは次に転ぶ予告だと考えてください。
危ないのは、湯の中だけではない
浴槽をまたぐとき、洗い場で立ち上がるとき、脱衣所で服を脱ぐとき。転ぶ場面はいくつもあります。
脱衣所と浴室の温度差も、体に負担をかけます。 冬は先に脱衣所と浴室を暖めてください。 湯を張るときにふたを開けておくだけでも変わります。
道具で、ずいぶん楽になる
浴槽の縁に付ける手すり、中に入れる椅子、洗い場で使う背もたれ付きの椅子、床に敷く滑り止め。体を鍛えるより、道具のほうが早く効きます。
入浴に使うものは、購入の対象になっているものがあります。 指定を受けた事業所から買う必要があります。先にケアマネジャーへ相談してください。
嫌がるのには理由がある
面倒だからではないことがあります。寒い、怖い、人に見られたくない、疲れる、体が痛い。
理由が分かれば、変えられることがあります。 時間を変える、湯の温度を変える、同性の職員に頼む。説得より、原因を一つずつ潰すほうが早く進みます。
家で入るのが難しくなったとき
家の風呂が狭い、体を支えきれない、一人では危ない。そういうときは、家で頑張り続けなくて構いません。
通所のサービスで入る、訪問入浴に来てもらう。 どちらも介護保険で使えます。このサイトの市区町村ページで、近くにどれだけあるかを見られます。 ケアマネジャーに希望を伝えてください。
- 毎日入らないと不衛生ですか。
- 毎日でなくても、体を拭く、部分的に洗うことで保てます。冬は回数を減らし、暖かい日中に入るという組み方もあります。無理に毎日入れることが目的ではありません。
- 浴槽から出られなくなりました。
- その場では無理に引き上げず、湯を抜いて体を冷やさないようにし、助けを呼んでください。繰り返すようなら、浴槽内いすや手すり、訪問入浴への切り替えを検討する時期です。
訪問入浴介護は全国に1,527件ある
この記事で触れている訪問入浴介護は、当サイトに1,527件掲載しています。65歳以上1万人あたりにすると全国で0.4件です。定員が分かっている357件では、まんなかの定員が35人でした。運営しているのは627の法人です。
65歳以上の人数で割って多い順に並べると、上から長野県・岩手県・宮城県。少ないほうは高知県・長崎県・鳥取県の順になります。件数そのものの順位とは、まるで違う顔ぶれになります。件数で並べると人口の多い都道府県が上に来るだけで、その地域が手厚いかどうかは分からないためです。
掲載があるのは全国1,892市区町村のうち730市区町村で、1,162の市区町村には1件もありません。制度として使えることと、住んでいる場所で実際に選べることは別だ、ということです。お住まいの市区町村に何件あるかは、当サイトの市区町村ページで確かめられます。
この記事の出典
- 消費者庁冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください2026-08-22 確認
- 消費者庁みんなで知ろう、防ごう、高齢者の事故2026-08-22 確認
- 厚生労働省福祉用具・住宅改修2026-08-22 確認
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