家で続けるか、施設へ移るか。決め手になるのは介護する側の限界
「まだ家で見られるはず」と思いながら共倒れになる例が多くあります。判断は気持ちではなく、条件で見てください。
限界を決めるのは要介護度ではない
同じ要介護3でも、日中ひとりで過ごせる人と、目を離せない人がいます。在宅が続くかどうかは、本人の状態より「介護する人が眠れているか」で決まります。
夜間に何度も起きる、目を離すと外へ出てしまう、トイレの失敗が続く。この3つのどれかが始まると、在宅は急に難しくなります。 昼のサービスをいくら増やしても、夜が持ちません。
先に使い切るもの
施設を考える前に、ショートステイ、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、夜間対応型訪問介護が使えないかをケアマネジャーに確かめてください。泊まりを組み合わせれば持ちこたえられる場面があります。
ショートステイを「かわいそうだから」と避けないでください。 介護する側が休むためのしくみです。倒れてから慌てて探すより、元気なうちに1泊から慣らしておくほうが、いざというときに使えます。
移ると決めてよい合図
- 介護する人が体調を崩している、眠れていない
- 手を上げそうになった、強い言葉が出るようになった
- 本人の医療的な処置が家では続けられない
- 転倒や外出で、命に関わる危険が現実になっている
- 仕事を辞めなければ続かないところまで来ている
本人が嫌がるとき
「施設には行かない」と言われて動けなくなる家族が多くいます。説得より先に、ショートステイで慣らす方法があります。何度か泊まって場所と人に慣れると、話が進むことがあります。
決めるのは家族だけでなくてよいのです。 ケアマネジャー、かかりつけ医、地域包括支援センターを入れて話すと、本人も「家族が勝手に決めた」と感じにくくなります。
家に居ればお金がかからない、わけではない
在宅を選ぶ理由として費用が挙げられますが、実際には、家で見るほうにもお金はかかります。訪問介護やデイサービスの利用料、おむつ代、住宅の改修、福祉用具。上限を超えて使えば、その分は全額の負担になります。
見落とされやすいのは、介護する家族が働き方を変えることによる収入の減り方です。残業をやめる、時短にする、辞める。ここまで数えて比べないと、本当のところは分かりません。
「いつまで」を決めてから始める
在宅を続けると決めたなら、いつ見直すかを一緒に決めてください。三か月後、あるいは次に体調を崩したとき。期限を置かずに始めると、限界が来ても止まれません。
見直す日には、その時点の条件で判断します。眠れているか、仕事が続けられているか、本人の状態が変わっていないか。「まだいける」ではなく「条件を満たしているか」で見ると、判断が引き延ばされません。
きょうだいのあいだで、先に話す
同居している一人が決めて、あとから遠方のきょうだいが反対する。この形がいちばん揉めます。実際に介護をしていない人ほど、施設に入れることに強く反対しがちです。
「反対するなら、その分を引き受けてもらう」という話にしてください。 一晩でも泊まって世話をすれば、見え方が変わります。誰が費用を持つか、誰が手続きをするかも、この段階で決めておきます。
探すのは、必要になる前から
施設は、申し込んですぐ入れるとは限りません。とくに費用の安いところは、待つことを見込んでおく必要があります。急に必要になってから探すと、選ぶ余地がなくなります。
入る前提でなくて構いません。通える範囲にどんな施設が何件あるのかを、先に見ておいてください。 当サイトでは市区町村ごとに一覧を載せているので、家から近い順に見当をつけられます。
在宅の限界は、本人だけで決まらない
本人の状態が同じでも、続けられる家と続けられない家があります。支える人が何人いるか、家の造り、通える距離、仕事との兼ね合い。
「本人がまだ動けるから在宅」という決め方は危ういです。 支える側が倒れれば、その日から在宅は終わります。 両方を見て決めてください。
施設に入っても、家族の役目は残る
入れば手が離れると思っていると、後で戸惑います。受診の付き添い、日用品の補充、契約や支払いの手続き、体調が変わったときの連絡。
減るのは日々の身体介護と夜間の負担です。 そこが減るだけでも大きい。ただし「何もしなくてよくなる」ではありません。
間の選択肢を飛ばさない
在宅か施設かの二択で考えると、行き詰まります。その間に段階があります。
通所の回数を増やす、泊まりを組み合わせる、夜間に来てもらう、小規模多機能で通い・訪問・泊まりをまとめる。 これで持ち直す家庭があります。ケアマネジャーに「今の組み方で限界が近い」と伝えてください。
本人の希望を、記録に残す
判断が難しくなってからでは、本人の考えを確かめられません。家族が推測で決めることになります。
話せるうちに、どこで暮らしたいかを聞いておいてください。 書き留めておけば、家族の間で意見が割れたときの拠り所になります。後悔の量が変わります。
- 施設に入れるのは見捨てることですか。
- 違います。介護する人が倒れれば、本人の暮らしも成り立たなくなります。どこで暮らすかを変えても、家族としての関わりは続きます。面会、持ち物の用意、方針の相談は家族の役目のままです。
- 遠くに住んでいて判断できません。
- ケアマネジャーと地域包括支援センターに状況を伝え、定期的に様子を聞ける形を作ってください。帰省したときだけの印象で判断すると、実際より軽く見えます。
小規模多機能型居宅介護が1件も無い市区町村が612ある
数のうえでは、小規模多機能型居宅介護は全国に5,352件です。65歳以上1万人あたりにすると全国で1.5件です。定員が分かっている2,810件では、まんなかの定員が28人でした。運営しているのは3,320の法人です。
65歳以上1万人あたりで見ると、いちばん多いのは福井県(3.6件)、いちばん少ないのは茨城県(0.7件)です。同じ国の中で5.1倍のひらきがあります。全国の平均は1.5件なので、福井県は平均の2.4倍にあたります。
掲載があるのは全国1,892市区町村のうち1,280市区町村で、612の市区町村には1件もありません。制度として使えることと、住んでいる場所で実際に選べることは別だ、ということです。お住まいの市区町村に何件あるかは、当サイトの市区町村ページで確かめられます。
この記事の出典
- 厚生労働省地域包括ケアシステム2026-08-22 確認
- 福祉医療機構 WAM NET介護保険サービス一覧2026-08-22 確認
- 内閣府令和7年版高齢社会白書 第1章第2節 健康・福祉2026-08-22 確認
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