虐待は殴ることだけではない。通報は責めるためではない
介護している人自身が「これは虐待かもしれない」と気づくことがあります。そのときに通報するのは、自分を守ることでもあります。
5つの型
| 型 | 例 |
|---|---|
| 身体的虐待 | たたく、つねる、無理やり縛る、閉じ込める |
| 介護の放棄 | 食事や水分を与えない、必要な受診をさせない、不衛生なまま放置する |
| 心理的虐待 | どなる、無視する、子ども扱いする、恥をかかせる |
| 性的虐待 | 本人の意に沿わない性的な行為、排泄の介助で羞恥心を無視する |
| 経済的虐待 | 年金や預金を勝手に使う、必要なお金を渡さない |
「そんなつもりはなかった」でも当たります。 転落を防ぐためにベッドに縛る、外へ出ないよう鍵をかける。安全のためのつもりが、身体的虐待に当たることがあります。
追い詰められた結果として起きる
虐待をする人の多くは、悪意で始めたわけではありません。 眠れない日が続き、誰にも代わってもらえず、限界を超えたところで起きます。だから制度は、罰することよりも介護している人を支えることを柱にしています。
自分がやってしまっていると気づいたら、その時点で相談してください。 隠すほど深まります。地域包括支援センターは、そこから体制を組み直す窓口です。
通報する
通報先は市区町村(高齢福祉の窓口)と地域包括支援センターです。命に関わる恐れがあるときは、確信が無くても通報してよいとされています。
施設の中で起きたとき
施設や事業所の職員による虐待も、同じく市区町村への通報の対象です。施設の中の相談窓口だけで終わらせないでください。 市区町村が調査し、必要な指導を行います。
あざ、極端な体重の減り、以前と違うおびえ方、家族に会いたがらない。 面会のときに見て気になったら、記録(日付・場所・写真)を残してから相談してください。
お金のことは、身内で起きる
経済的虐待は、外の人ではなく、いちばん近くにいる家族によって起きます。年金を渡さない、通帳を握って必要なものを買わせない、勝手に引き出して自分の生活に使う。
本人が「息子に任せている」と言っても、それが本人の望みとは限りません。必要な受診や、必要な介護のサービスを、お金を理由に使わせないのも同じことに当たります。気づいた人は、市区町村か地域包括支援センターに相談できます。
言葉のほうは、自覚しにくい
たたいたことは自分でも分かりますが、どなったこと、無視したこと、子どもに話すような言い方をしたことは、記憶に残りません。疲れているときほど、口調は荒くなります。
自分の言い方が気になり始めたら、それはもう限界が近いという合図です。 我慢して続けるより、休みを組み込むほうが先です。ショートステイやデイサービスの回数を増やすことを、ケアマネジャーに頼んでください。
相談したあと、何が起きるか
通報すると家族が引き離される、と思って黙ってしまう人がいます。実際には、まず市区町村が事実を確かめ、何が起きているかを見ます。
多くの場合、行われるのは介護の体制を組み直すことです。サービスを増やす、施設での預かりを入れる、関わる人を増やす。分けて保護するのは、命に関わるときに限られます。 相談したことで、介護している人が罰せられるわけではありません。
起きる前に、手を打てる
虐待に至る家庭には、たいてい前触れがあります。眠れていない、代わってくれる人がいない、収入が減っている、相談する相手がいない。
この四つのどれかが当てはまるなら、いまが相談する時期です。 起きてから相談するより、起きる前に組み直すほうが、本人にとっても家族にとっても、はるかに損が少なくて済みます。
追い詰められた末に起きる
悪意から始まることは、多くありません。眠れない、逃げ場がない、誰にも言えない。 その積み重ねの先で起きます。
だから、加害した人を責めるだけでは止まりません。 支える形を組み直さなければ、また起きます。 起きた後の対応も、そこに向きます。
気づいたら、通報が求められている
家族であっても、事業所の職員であっても、気づいた人は市区町村へ知らせることが法律で定められています。確証がなくても構いません。
知らせた人が誰かは、明かされません。 通報は、加害した人を罰するためではなく、その家庭に支援を入れるための入り口です。そこを誤解しないでください。
自分がしていると気づいたとき
手が出た、怒鳴った、無視した。気づいた時点で、自分から相談してよいものです。
地域包括支援センターに、正直に伝えてください。 責められるために行くのではありません。離す手立て、サービスの組み直し、休む時間の確保。 具体的に動かせます。
お金のことも含まれる
本人の年金や貯えを、本人のために使わずに家族が使う。これも該当します。
悪気がなくても、線を越えていることがあります。 出し入れの記録を残し、他の家族へ知らせておいてください。成年後見や、日常のお金を支えるしくみを使う道もあります。
- 確信が持てません。
- 確信は要りません。通報を受けた市区町村が確かめます。判断するのは通報する側の役目ではありません。
- 家族が引き離されますか。
- 命に関わる場合には分けて保護することがありますが、多くは介護の体制を組み直すことで対応します。相談した時点で家族が壊されるわけではありません。
この記事の出典
- 厚生労働省高齢者虐待防止2026-08-22 確認
- 厚生労働省市町村・都道府県における高齢者虐待への対応と養護者支援について2026-08-22 確認
- 国民生活センター高齢者の消費者被害2026-08-22 確認
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