認知症があるとき、どんな住まいが向いているか
環境が変わること自体が負担になるため、移る回数を減らせる選び方が要ります。
移る回数を減らす
認知症のある人にとって、場所と人が変わること自体が大きな負担です。移った直後に混乱が強くなり、それが「対応が難しい」と判断されてまた移る、という連鎖が起きます。
だから選ぶときは「今の状態に合うか」ではなく「重くなっても居られるか」を見ます。 医療的な処置が必要になったとき、歩けなくなったとき、看取りのとき。この3つを必ず聞いてください。
少人数という選び方
認知症対応型共同生活介護は、少人数の共同生活の形をとります。顔ぶれが変わらないことと、家事に加わることが、その人の力を保つという考え方です。要支援2以上で、その市区町村に住んでいる人が対象になります。
ただし医療的な対応には限りがあります。 重い医療処置が必要になると住み替えが要ることがあるので、そこも確かめておきます。
見学で見るところが違う
| 見るところ | なぜ |
|---|---|
| 鍵をかけて閉じ込めていないか | 安全は行動の制限で作るものではない |
| 職員が急に体に触れていないか | 驚かせる関わりが混乱の原因になる |
| 入居者が何かしているか | 役割があると落ち着くことが多い |
| なじみの物を持ち込めるか | 見慣れた物が安心の手がかりになる |
| 職員が入れ替わっていないか | 顔を覚えられる相手かどうか |
在宅で続けるとき
小規模多機能型居宅介護や看護小規模多機能型居宅介護は、通い・泊まり・訪問を同じ職員が担うので、認知症のある人には環境の変化が少なくて済みます。住み替える前に、この形が使えないかを確かめてください。
移る時期は、早すぎても遅すぎても難しい
進んでからのほうが本人も分からないだろう、と考えて先延ばしにする家族がいます。実際には逆のことが多くあります。
新しい場所と人を覚えられるうちに移るほうが、なじむのが早いと言われます。「まだ大丈夫」と待った結果、覚える力が落ちてから移ることになると、混乱が長引きます。 早ければよいという話ではありませんが、遅らせることが優しさとは限りません。
住み慣れた物を、持っていく
居室に何を持ち込めるかは、施設によって違います。使っていた椅子、着慣れた服、写真、仏壇、目覚まし時計。
新しく買いそろえないでください。 見慣れない真新しい物ばかりの部屋は、そこが自分の場所だと感じにくくなります。家で使っていた物が並んでいるほうが、落ち着きが早くなります。
移った直後は、崩れることがある
眠れなくなる、食べなくなる、帰ると言い続ける、怒りっぽくなる。移ったあとの数週間に、こうしたことが強く出ることがあります。
多くは、時間とともに落ち着いていきます。 ここで慌てて連れ戻すと、本人にとっては移動が二回になり、かえって負担が増えます。ただし、やせてきた、傷がある、薬が増えているのに説明がない、といったときは別です。遠慮せずに聞いてください。
住んでいる市区町村が条件になるものがある
認知症対応型共同生活介護や小規模多機能型居宅介護は、地域密着型と呼ばれる区分に入ります。原則として、その市区町村に住んでいる人が対象です。
隣の市に良さそうなところがあっても、そのままでは使えないことがあります。先に、住んでいる市区町村の中に何件あるかを確かめてください。 当サイトでは市区町村ごとに件数を載せているので、選べる幅がどれくらいあるかが分かります。
慣れた環境を変える負担
住まいが変わると、しばらく混乱が強く出ることがあります。「入ってから悪くなった」と感じる時期があります。
多くは時間とともに落ち着きます。 ただし、そこで慌てて戻すと、二重に負担がかかります。 移る前に、この時期があることを家族で共有しておいてください。
見慣れたものを持ち込む
使っていた寝具、写真、時計、長年の持ち物。目に入るものが同じだと、落ち着きが早く戻ります。
何を持ち込めるかは施設によって違います。 見学のときに聞いてください。部屋の配置を、家にいたときと似せられるかも聞く価値があります。
本人のこれまでを、施設に伝える
何をしてきた人か、何が好きか、何を嫌がるか。これが分かっていると、対応がまったく変わります。
紙にまとめて渡してください。 昔の仕事、育った場所、呼ばれ慣れた名前、苦手な音。職員が入れ替わっても、記録として残ります。
面会をやめない
会うと帰りたがるから行かない、という家族がいます。行かなくなると、本人は忘れられたと感じます。
短くても、回数を保つほうがよい場合が多いです。 帰り際が難しければ、職員に段取りを相談してください。慣れている職員は、切り上げ方を知っています。
- 認知症だと断られますか。
- 断られることがあります。ただし施設によって受け入れの幅が違うため、複数に当たってください。地域包括支援センターは、その地域で受け入れているところを知っています。
- 本人に説明すべきですか。
- 説明してください。理解が難しく見えても、感情は残ります。だまして連れて行くと、その後の関わりが壊れます。伝え方はケアマネジャーや医師と相談できます。
小規模多機能型居宅介護は全国に5,352件ある
この記事で触れている小規模多機能型居宅介護は、当サイトに5,352件掲載しています。65歳以上1万人あたりにすると全国で1.5件です。定員が分かっている2,810件では、まんなかの定員が28人でした。運営しているのは3,320の法人です。
65歳以上1万人あたりで多い順に並べると、上位は福井県・鳥取県・岡山県です。上位5県のうち、高齢化率でも全国10位以内に入るのは2県です。高齢者の多さだけで事業所の数が決まるわけではない、ということになります。少ないほうは茨城県・埼玉県・東京都の順です。
掲載があるのは全国1,892市区町村のうち1,280市区町村で、612の市区町村には1件もありません。制度として使えることと、住んでいる場所で実際に選べることは別だ、ということです。お住まいの市区町村に何件あるかは、当サイトの市区町村ページで確かめられます。
この記事の出典
- 厚生労働省認知症施策2026-08-22 確認
- 国立長寿医療研究センターもの忘れと認知症2026-08-22 確認
- 福祉医療機構 WAM NET介護保険サービス一覧2026-08-22 確認
あわせて読む
福祉用具のことをもっと詳しく
福祉用具だけを扱う姉妹サイト「福祉用具ブラリー」の記事です。 どちらも株式会社京谷商会が運営しています。
食事のことをもっと詳しく
高齢者の食事だけを扱う姉妹サイト「配食のふれ愛 太子店」の記事です。 どちらも株式会社京谷商会が運営しています。