認知症とは?種類によって現れ方が違う
「認知症」は一つの病気の名前ではありません。原因となる病気がいくつもあり、どれかによって、困りごとの中身も向き合い方も変わってきます。
加齢のもの忘れとの違い
年を重ねれば誰でももの忘れは増えます。違いは、体験の一部を忘れるか、体験そのものを忘れるかにあると言われます。朝ごはんのおかずを思い出せないのは前者、食べたこと自体が抜け落ちるのは後者です。
もう一つの目安は、暮らしに支障が出ているかどうかです。忘れっぽくても自分で暮らしが回っているうちは、認知症とは呼びません。日付が分からず薬を飲めない、火を使ったことを忘れる、といった段階になると話が変わります。
原因になる病気で現れ方が変わる
| 病気 | 目立ちやすいこと |
|---|---|
| アルツハイマー型認知症 | 新しいことを覚えられない。日付や場所が分からなくなる |
| 血管性認知症 | 脳梗塞などのあとに段階的に進む。できることとできないことの差が大きい |
| レビー小体型認知症 | 実際にはいない人が見える。調子の良し悪しの波。動作が遅くなる |
| 前頭側頭型認知症 | 同じ行動を繰り返す。周囲への気づかいが薄れる。言葉が出にくい |
治せる原因が隠れていることがある
認知症のように見えて、別の原因が隠れていることがあります。甲状腺の働きの低下、ビタミンの不足、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、薬の影響、うつなどです。これらは治療によって良くなることがあります。
受診をすすめる理由の一つがここにあります。「どうせ治らないから」と診てもらわないままだと、治せるものを見逃します。
進み方には幅がある
同じ病名でも、進む速さは人によって違います。年単位でゆっくり変わる人もいれば、体調を崩したあとに一気に変わる人もいます。先の年数を数えるより、いま困っていることを一つずつ減らすほうが、暮らしは楽になります。
病名がすぐに決まらないことがある
一度の受診で病名がはっきりしないことは珍しくありません。時間をおいて変化を見てから判断されることもあれば、経過の途中で見立てが変わることもあります。
はっきりしないあいだも、暮らしの手当ては始められます。要介護認定の申請、地域包括支援センターへの相談、家の中の見直し。病名が決まるのを待って何もしない時間が、いちばんもったいないところです。
本人には、世界がどう見えているか
忘れることそのものより、うまくいかないことが増えていく不安のほうが、本人にとっては大きいことがあります。覚えていないという自覚が無いまま、周りに責められる場面だけが積み重なります。
同じことを何度も聞かれると、家族は疲れます。それでも、本人にとっては毎回が初めてです。事実を正すことと、その場が収まることは、別のことだと考えておくと少し楽になります。
病名が分かると、備え方が変わる
同じ「認知症」でも、注意すべきところは違います。段階的に進む型では、もとになった血管の病気を治療し続けることが要りますし、動作が遅くなる型では、転ぶことへの備えが先に来ます。
見え方や行動の変化が目立つ型では、家の中の物の置き方や、声のかけ方を変えることが手当てになります。主治医に「どの型と考えていますか」と聞いておくと、家族が何に気をつければよいかが決まります。
早く分かることの意味は、本人が決められること
診断がつくのを怖がる家族は多くいます。ただ、早い時期であれば、本人が自分のことを自分で決められます。お金の管理を誰に頼むか、どこで暮らしたいか、どこまでの治療を望むか。
あとから家族が推し量って決めるより、本人の言葉が残っているほうが、決める側も楽になります。 任意後見や、これからの暮らしの希望を話し合う場は、この時期にこそ意味があります。
病名ではなく、状態を指す言葉
認知症は、一つの病気の名前ではありません。いくつもの原因によって、覚える・判断する・段取りを組むといった働きが落ちた状態をまとめて呼んでいます。
原因が違えば、出方も進み方も違います。 同じ「認知症」と言われた人どうしを比べても、あまり参考になりません。 目の前の人がいま何に困っているかを見てください。
治せるものが混じっている
認知症のように見えて、別の原因であることがあります。薬の影響、甲状腺の働き、栄養の偏り、頭の中の出血、うつ。
これらは手当てをすれば戻ることがあります。 だから、決めつけずに一度診てもらう意味があります。「年だから」で片づけると、戻せたものを見逃します。
本人がいちばん不安を感じている
できていたことができない。言われたことが思い出せない。その戸惑いを、いちばん強く感じているのは本人です。
不安が強いと、混乱も強く出ます。 責める、試す、間違いを正す。この3つは不安を大きくします。 落ち着いていられる時間を増やすほうが、結果として穏やかに過ごせます。
一人で抱え込まない
介護をしている家族が、外に言えないまま何年も過ごすことがあります。家の中だけで抱えると、続きません。
地域包括支援センター、もの忘れの相談ができる医療機関、家族の会。 相談先は複数あります。このサイトの市区町村ページには、地域包括支援センターの連絡先を載せてあります。
- 認知症は遺伝しますか。
- ごく一部に、家族性の遺伝子が関わる型があります。ただし大多数は遺伝だけで決まるものではありません。心配なときは、もの忘れ外来などで相談してください。
- 予防はできますか。
- 確実に防ぐ方法は分かっていません。ただし、高血圧や糖尿病の管理、運動、難聴があれば補聴器を使うこと、人と関わり続けることは、危険を下げると報告されています。
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