出かけたまま戻らない。備えと、その日にすること
ためらう時間がいちばん危険です。「大げさかもしれない」と考えている間に、行ける範囲は広がります。
その日にすること
迷ったらすぐ110番です。 「まだ数時間だから」と待つ理由はありません。警察に届け出ても、本人が見つかれば取り下げられます。届け出をためらったために遅れるほうが、はるかに大きな損失になります。
- 家の中と敷地内をもう一度見る(物置、風呂場、車の中で見つかることがある)
- 110番して行方不明者届を出す。写真をすぐ見せられるようにしておく
- 地域包括支援センターと、市区町村の担当課に連絡する
- ケアマネジャー、デイサービスなど日ごろ関わる人に伝える
- 交通機関、立ち寄りそうな店、昔住んでいた場所を当たる
警察に伝えること
- 最近の写真(全身と顔。当日の服装に近いもの)
- 身長、体格、髪、眼鏡、杖や歩行器の有無
- いなくなったときの服装と持ち物、所持金
- 認知症であること、持病と飲んでいる薬
- 過去に向かった場所、以前の住所や勤め先
事前にできる備え
多くの市区町村に、認知症の人を事前に登録しておくしくみがあります。名前や特徴を登録しておくと、保護されたときの照合が早くなります。呼び名は地域によって違うので、地域包括支援センターで聞いてください。
身につけるものに連絡先を残す方法もあります。衣類や靴に名前と電話番号を書く、識別番号のついたシールを貼る、靴に入れる小さな発信機を使う。 財布やかばんは持たずに出ることが多いので、身につけるものに残すのが要点です。
| 手立て | 気をつけること |
|---|---|
| 市区町村の事前登録 | 呼び名も内容も地域ごとに違う。窓口で確かめる |
| 衣類・靴への記名、シール | 毎日着るもの・履くものに付けないと意味がない |
| 位置が分かる機器 | 充電と持ち出しが続かないと働かない。靴底型もある |
| 近所への声かけ | 恥ずかしさより安全を取る。見つかる速さが変わる |
出て行く理由を減らす
外に出ようとするのは、たいてい理由があります。仕事に行かなければ、子どもを迎えに行かなければ、家に帰らなければ。閉じ込めるより、日中の居場所と役割があるほうが落ち着きます。 デイサービスの利用で減ることがあります。
写真は、今日撮っておく
いざというときに、最近の写真が見つからない家庭は多くあります。あるのは何年も前のもので、髪の色も体つきも違う。それでは照合の役に立ちません。
正面の顔と、立っている全身を、季節ごとに撮り直してください。よく着ている服を着た状態で撮っておくと、そのまま服装の説明になります。 家族の何人かが同じ写真を持っておくと、誰が警察へ行っても対応できます。
恥ずかしさより、伝えておくこと
近所に知られたくない、という気持ちから、認知症であることを誰にも言わない家庭があります。ところが、見つけてくれるのは、たいてい近所の人か、いつも通る道の店の人です。
両隣とよく行く店、行きつけの理容室、いつものバス停。「見かけたら教えてください」と一言伝えておくだけで、見つかるまでの時間が変わります。 認知症の人に地域で気づくための講座を開いている市区町村もあります。
徒歩とは限らない
自転車に乗れる人、車の鍵を持っている人では、行ける範囲が一気に広がります。電車やバスに乗ってしまうと、隣の県まで届きます。
交通系のカードを持っているか、財布にいくら入っているかは、警察に伝えてください。 探す範囲の決め方が変わります。運転をどうするかは別の話ですが、行方が分からなくなったことがある人については、あわせて考える時期に来ています。
見つかったあとに、崩れることがある
長い時間歩き回ったあとは、脱水や低体温、足の傷を起こしていることがあります。本人は「大丈夫」と言うので、見過ごされがちです。
見つかった日は、水分を取らせて、足と体を見てください。寒い時期や暑い時期に長時間外にいた場合は、元気そうに見えても医療機関で診てもらってください。 そのうえで、なぜ出たのかをケアマネジャーと振り返ります。
早く届け出るほど、見つかりやすい
身内の恥だと思って、時間が経ってから届け出る家庭があります。そのぶん、探す範囲が広がります。
迷ったら、早いうちに警察へ届けてください。 見つかってから取り下げれば済むことです。 遠慮している間に、行ける距離はどんどん広がります。
思っているより遠くへ行く
近所を探せば見つかるとは限りません。電車やバスに乗って、何十キロも先で見つかることがあります。
昔住んでいた場所、勤めていた場所、実家。 本人にとって意味のある場所を、家族で書き出しておいてください。行き先の見当がつくと、探す範囲を絞れます。
見つかったときに、責めない
心配した分だけ、強く言いたくなります。責めると、次からは黙って出るようになります。
まず無事でよかったと伝えてください。 出て行った理由が分かれば、そこを手当てできます。何かを探しに行った、帰ろうとした、不安だった。 理由のない外出はほとんどありません。
起きる前に、備えておく
一度あった家庭では、また起きます。起きてから考えるものではありません。
持ち物に連絡先を書いておく、位置が分かる機器を持たせる、近所と民生委員に事情を伝えておく。 市区町村が捜索のしくみや機器の貸し出しを用意していることがあります。地域包括支援センターに聞いてください。
- 玄関に鍵をかけて閉じ込めてもよいですか。
- 出られないようにすることは、身体の自由を奪うことに当たります。やむを得ない場面はありますが、まずケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してください。玄関の開閉を知らせる装置など、閉じ込めずに気づく方法があります。
- 見つかったあとにすることは。
- 警察へ取り下げの連絡をします。そのうえで、なぜその時間に出たのかを振り返り、ケアマネジャーに共有してください。一度あると繰り返すことが多いので、備えを整える機会にします。
通所介護が1件も無い市区町村が182ある
数のうえでは、通所介護は全国に24,483件です。65歳以上1万人あたりにすると全国で6.8件です。定員が分かっている10,703件では、まんなかの定員が30人でした。運営しているのは14,324の法人です。
65歳以上1万人あたりで見ると、いちばん多いのは沖縄県(16.7件)、いちばん少ないのは北海道(4.3件)です。同じ国の中で3.9倍のひらきがあります。全国の平均は6.8件なので、沖縄県は平均の2.5倍にあたります。
掲載があるのは全国1,892市区町村のうち1,710市区町村で、182の市区町村には1件もありません。制度として使えることと、住んでいる場所で実際に選べることは別だ、ということです。お住まいの市区町村に何件あるかは、当サイトの市区町村ページで確かめられます。
この記事の出典
- 警察庁令和7年における行方不明者届受理等の状況PDF2026-08-22 確認
- 厚生労働省主な認知症施策2026-08-22 確認
- 厚生労働省認知症に関する相談先2026-08-22 確認
あわせて読む
福祉用具のことをもっと詳しく
福祉用具だけを扱う姉妹サイト「福祉用具ブラリー」の記事です。 どちらも株式会社京谷商会が運営しています。
食事のことをもっと詳しく
高齢者の食事だけを扱う姉妹サイト「配食のふれ愛 太子店」の記事です。 どちらも株式会社京谷商会が運営しています。