通帳が管理できなくなったとき、家族にできること
「まだ大丈夫」と「もう動かせない」の間に、手を打てる時期があります。動かせなくなってからでは、選べる手立てが減ります。
起きること
判断能力が落ちると、本人名義の口座からお金を動かせなくなります。定期預金の解約、施設の入居契約、家の売却、保険の手続きが止まります。家族であっても、代わりにはできません。
同時に、同じ物を何度も買う、訪問販売や電話勧誘の契約をしてしまう、催促に応じて振り込んでしまうといったことが起きます。財産が減る方向にだけは、止まらずに動いてしまうのが厄介なところです。
二つのしくみを使い分ける
| 日常生活自立支援事業 | 成年後見制度 | |
|---|---|---|
| やってもらえること | 生活費の払い出し、支払いの代行、通帳の預かり、福祉サービスの手続きの手伝い | 財産の管理全般、契約、不利な契約の取り消し |
| 本人の同意 | 契約するので、内容が分かる程度の判断力が要る | 判断力が落ちていても家庭裁判所が選任する |
| 窓口 | 社会福祉協議会 | 家庭裁判所(申立て) |
| 費用 | 利用料(実施主体が定める。相談は無料) | 申立ての費用と、後見人への報酬 |
判断力があるうちにできる備え
- 任意後見契約を結んでおく(誰に頼むかを本人が決められる)
- 金融機関の代理人届(代理人カード)を出しておく
- 通帳・印鑑・保険証券・年金の書類の置き場所を家族と共有する
- 公共料金や保険料を口座振替にまとめる
- 使っていない口座を整理する
被害への備え
訪問販売、電話勧誘、点検を装った工事の勧誘は、繰り返し狙われます。一度契約した家は名簿に残ると言われます。留守番電話を常時オンにする、玄関に断りの表示を出す、日ごろから「相談してから決める」と決めておくのが現実的な備えです。
契約してしまったあとでも、クーリング・オフができる場合があります。消費者ホットライン(188)に電話すれば、住んでいる地域の消費生活センターにつながります。日付が大切なので、気づいたらすぐ相談してください。
支払いの流れを、先に単純にしておく
コンビニで払う公共料金、月ごとに振り込む家賃、窓口で払う税金。手で払うものが多いほど、払い忘れと二重払いが起きます。督促状が積まれていることに、あとから気づくことになります。
口座振替にまとめられるものは、判断力があるうちにまとめてください。使っていない口座を解約し、通帳と印鑑の置き場所を家族が知っている状態にする。 これだけで、あとの手間がまるで違ってきます。
財布から現金を取り上げない
無駄遣いを心配して財布ごと預かってしまう家族がいます。ところが、お金を持っていないことは、本人にとって強い不安になります。「盗られた」という訴えが増える引き金にもなります。
多くの金額でなくてよいので、自分の財布にお金がある状態を保ってください。 大きなお金の流れは家族が押さえ、日々の小遣いは本人が持つ。この分け方のほうが、揉めごとが減ります。
立て替えたお金は、その日に書く
同居している家族が、介護用品や医療費を立て替える場面は毎日のように出てきます。まとめて精算しようとすると、いくら使ったのか分からなくなります。
日付、金額、何に使ったか。ノートでも表計算でも構いません。領収書は封筒に入れておくだけでも残ります。 きょうだいのあいだで「使い込んだのではないか」という話になったとき、身を守るのはこの記録です。
本人のお金は、本人のために使う
同居して介護をしていると、境目が曖昧になっていきます。家全体の食費、光熱費、車の費用。どこまでが本人のためか、線を引きにくくなります。
迷ったら、第三者に説明できるかどうかで考えてください。 説明が難しいものは、家族の側の負担にしておくほうが安全です。後見人がついたあとは、この線を守ることが求められます。
口座が凍るという事態
判断が難しいと金融機関が知ると、本人の口座からお金を動かせなくなることがあります。家族であっても、代わりに下ろせません。
介護の費用は本人の財産から払うのが基本なのに、その財産に手が届かなくなります。 元気なうちに、家族の間で決めておいてください。 ここが後で最も困るところです。
通帳を預かるだけでは足りない
通帳と印鑑を家族が持っていても、本人の意思が確かめられなければ動かせないことがあります。「持っている」と「使える」は別です。
任意後見、家族信託、日常生活自立支援事業。 状況に応じて、使えるしくみが分かれます。どれが向くかは、地域包括支援センターか専門の相談窓口で聞いてください。
家族の間で、記録を残す
一人が財産を管理していると、後から他のきょうだいに疑われることがあります。善意でやっていても、説明できなければ疑われます。
出し入れを記録して、領収書を残してください。 定期的に他の家族へ知らせる形にしておくと、争いになりません。面倒に見えて、いちばん自分を守ります。
狙われやすくなる
判断が難しくなると、訪問販売や電話での勧誘に応じてしまうことがあります。同じものを何度も買っている、見慣れない請求が来る。
気づいたら、消費生活センターに相談してください。 契約をやめられる場合があります。電話を留守番設定にする、通帳の動きを定期的に見る。 起きる前に手を打てます。
- 家族が本人の口座からお金を出しています。
- 本人のために使っているのであれば問題になりにくいのですが、記録が無いとあとで説明できません。日付・金額・用途を残してください。兄弟姉妹の間の争いは、記録の有無で結果が変わります。
- 銀行に「本人でないと」と言われました。
- 金融機関によっては、代理人の届出や、医療費・介護費の支払いに限った引き出しに応じる取り扱いがあります。まず窓口で事情を伝えて確かめてください。それでも動かせないときが、成年後見制度を考える時期です。
この記事の出典
- 厚生労働省日常生活自立支援事業2026-08-22 確認
- 国民生活センター高齢者の消費者被害2026-08-22 確認
- 厚生労働省成年後見制度利用促進2026-08-22 確認
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