通帳が管理できなくなったとき、家族にできること

介護の窓口 編集部公開 2026-08-22最終更新 2026-08-25

「まだ大丈夫」と「もう動かせない」の間に、手を打てる時期があります。動かせなくなってからでは、選べる手立てが減ります。

起きること

判断能力が落ちると、本人名義の口座からお金を動かせなくなります。定期預金の解約、施設の入居契約、家の売却、保険の手続きが止まります。家族であっても、代わりにはできません。

同時に、同じ物を何度も買う、訪問販売や電話勧誘の契約をしてしまう、催促に応じて振り込んでしまうといったことが起きます。財産が減る方向にだけは、止まらずに動いてしまうのが厄介なところです。

二つのしくみを使い分ける

日常生活自立支援事業と成年後見制度
日常生活自立支援事業成年後見制度
やってもらえること生活費の払い出し、支払いの代行、通帳の預かり、福祉サービスの手続きの手伝い財産の管理全般、契約、不利な契約の取り消し
本人の同意契約するので、内容が分かる程度の判断力が要る判断力が落ちていても家庭裁判所が選任する
窓口社会福祉協議会家庭裁判所(申立て)
費用利用料(実施主体が定める。相談は無料)申立ての費用と、後見人への報酬
日常生活自立支援事業は契約なので、本人が「お願いします」と言える段階でしか始められません。 迷っているうちにその段階を過ぎると、成年後見制度しか選べなくなります。

判断力があるうちにできる備え

  • 任意後見契約を結んでおく(誰に頼むかを本人が決められる)
  • 金融機関の代理人届(代理人カード)を出しておく
  • 通帳・印鑑・保険証券・年金の書類の置き場所を家族と共有する
  • 公共料金や保険料を口座振替にまとめる
  • 使っていない口座を整理する

被害への備え

訪問販売、電話勧誘、点検を装った工事の勧誘は、繰り返し狙われます。一度契約した家は名簿に残ると言われます。留守番電話を常時オンにする、玄関に断りの表示を出す、日ごろから「相談してから決める」と決めておくのが現実的な備えです。

契約してしまったあとでも、クーリング・オフができる場合があります。消費者ホットライン(188)に電話すれば、住んでいる地域の消費生活センターにつながります。日付が大切なので、気づいたらすぐ相談してください。

支払いの流れを、先に単純にしておく

コンビニで払う公共料金、月ごとに振り込む家賃、窓口で払う税金。手で払うものが多いほど、払い忘れと二重払いが起きます。督促状が積まれていることに、あとから気づくことになります。

口座振替にまとめられるものは、判断力があるうちにまとめてください。使っていない口座を解約し、通帳と印鑑の置き場所を家族が知っている状態にする。 これだけで、あとの手間がまるで違ってきます。

財布から現金を取り上げない

無駄遣いを心配して財布ごと預かってしまう家族がいます。ところが、お金を持っていないことは、本人にとって強い不安になります。「盗られた」という訴えが増える引き金にもなります。

多くの金額でなくてよいので、自分の財布にお金がある状態を保ってください。 大きなお金の流れは家族が押さえ、日々の小遣いは本人が持つ。この分け方のほうが、揉めごとが減ります。

立て替えたお金は、その日に書く

同居している家族が、介護用品や医療費を立て替える場面は毎日のように出てきます。まとめて精算しようとすると、いくら使ったのか分からなくなります。

日付、金額、何に使ったか。ノートでも表計算でも構いません。領収書は封筒に入れておくだけでも残ります。 きょうだいのあいだで「使い込んだのではないか」という話になったとき、身を守るのはこの記録です。

本人のお金は、本人のために使う

同居して介護をしていると、境目が曖昧になっていきます。家全体の食費、光熱費、車の費用。どこまでが本人のためか、線を引きにくくなります。

迷ったら、第三者に説明できるかどうかで考えてください。 説明が難しいものは、家族の側の負担にしておくほうが安全です。後見人がついたあとは、この線を守ることが求められます。

口座が凍るという事態

判断が難しいと金融機関が知ると、本人の口座からお金を動かせなくなることがあります。家族であっても、代わりに下ろせません。

介護の費用は本人の財産から払うのが基本なのに、その財産に手が届かなくなります。 元気なうちに、家族の間で決めておいてください。 ここが後で最も困るところです。

通帳を預かるだけでは足りない

通帳と印鑑を家族が持っていても、本人の意思が確かめられなければ動かせないことがあります。「持っている」と「使える」は別です。

任意後見、家族信託、日常生活自立支援事業。 状況に応じて、使えるしくみが分かれます。どれが向くかは、地域包括支援センターか専門の相談窓口で聞いてください。

家族の間で、記録を残す

一人が財産を管理していると、後から他のきょうだいに疑われることがあります。善意でやっていても、説明できなければ疑われます。

出し入れを記録して、領収書を残してください。 定期的に他の家族へ知らせる形にしておくと、争いになりません。面倒に見えて、いちばん自分を守ります。

狙われやすくなる

判断が難しくなると、訪問販売や電話での勧誘に応じてしまうことがあります。同じものを何度も買っている、見慣れない請求が来る。

気づいたら、消費生活センターに相談してください。 契約をやめられる場合があります。電話を留守番設定にする、通帳の動きを定期的に見る。 起きる前に手を打てます。

家族が本人の口座からお金を出しています。
本人のために使っているのであれば問題になりにくいのですが、記録が無いとあとで説明できません。日付・金額・用途を残してください。兄弟姉妹の間の争いは、記録の有無で結果が変わります。
銀行に「本人でないと」と言われました。
金融機関によっては、代理人の届出や、医療費・介護費の支払いに限った引き出しに応じる取り扱いがあります。まず窓口で事情を伝えて確かめてください。それでも動かせないときが、成年後見制度を考える時期です。

この記事の出典

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