養護老人ホームとは?入るのは申し込みではなく市区町村の措置

介護の窓口 編集部公開 2026-08-23

名前が似ているので特別養護老人ホームと混同されますが、別の制度です。いちばん大きな違いは、自分で申し込むのではなく市区町村が決めるという点にあります。

措置という入り方

養護老人ホームは老人福祉法にもとづく施設です。特別養護老人ホームや有料老人ホームのように本人が施設を選んで契約するのではなく、市区町村が調査したうえで入所を決めます。 これを措置といいます。

つまり「入りたいから申し込む」場所ではなく、「自宅で暮らせない事情がある」と市区町村が判断したときに入る場所です。

見るところ養護老人ホーム特別養護老人ホーム
根拠老人福祉法(措置)介護保険法(契約)
決めるのは市区町村本人と施設
主な理由経済的な事情・家庭の事情・住まいの事情常時の介護が必要
要介護度問わない(自立でも入れる)原則として要介護3以上
介護外部のサービス、または特定施設の指定施設の職員

対象になる人

老人福祉法は、次の2つがそろっている65歳以上の人を対象としています。

  1. 環境上の理由で自宅での生活が難しいこと(住まいが無い、家族から適切な世話を受けられない、虐待を受けているなど)
  2. 経済的な理由で自宅での生活が難しいこと(生活保護を受けている、または収入が低い)
要介護認定は要りません。 体は元気でも、住むところが無い、家族と暮らせない、といった事情があれば対象になります。ここが特別養護老人ホームとの決定的な違いです。

手続きの進め方

  1. 市区町村の高齢福祉の担当課、または地域包括支援センターに相談する
  2. 職員が本人と面談し、住まい・収入・家族の状況を調べる
  3. 市区町村の入所判定委員会が、入所が必要かどうかを判定する
  4. 入所が決まると、市区町村が施設を指定して入所となる

施設に直接申し込んでも受け付けられません。窓口は必ず市区町村です。本人が動けない場合、家族・民生委員・病院の相談員・ケアマネジャーからの相談でも受け付けます。

費用の決まり方

費用は施設が決めるのではなく、本人と扶養義務者の前年の収入に応じて市区町村が決めます。収入が無ければ実質的な負担も生じません。

収入がある場合は段階的に上がり、年金収入がある程度ある人で月に数万円から十数万円になります。生活保護を受けている場合は、生活扶助のなかで賄われます。

金額はいずれも目安です。同じ種類でも、地域と建物と事業者によって倍ほど違うことがあります。介護保険の自己負担は1割として書いています(所得により2割・3割)。正確な額は、その住まいの重要事項説明書と見積もりで確かめてください。

介護が必要になったとき

養護老人ホームは介護をするための施設ではないため、入所中に介護が必要になったときは、外部の訪問介護や通所介護を使います。 在宅と同じ扱いです。

特定施設入居者生活介護の指定を受けている養護老人ホームもあり、そこでは施設の職員が介護をします。常時の介護が必要になった場合は、特別養護老人ホームへ移ることを市区町村と相談します。

似た名前の施設との違い

「養護」「特別養護」「軽費」は名前が近く、窓口でも取り違えが起きます。入り方がそれぞれ違うところを押さえておいてください。

施設入り方主に見るところ介護をするか
養護老人ホーム市区町村の措置経済的・環境上の理由しない(外部のサービスを使う)
特別養護老人ホーム施設に申し込む要介護3以上する
軽費老人ホーム・ケアハウス施設に申し込む自立して暮らせるか一般型はしない
サービス付き高齢者向け住宅事業者と契約する60歳以上か認定を受けているかしない(一般型)

養護老人ホームだけは、自分で申し込む先がありません。市区町村が調べて決めるしくみなので、相談の入口も施設ではなく市区町村の高齢福祉の担当課になります。

入所してからの暮らし

居室は個室が基本で、食事は施設が出します。生活相談員が置かれ、金銭の管理や通院の付き添いなど、日々の暮らしを立て直すための支えが中心になります。

外出や外泊は届け出のうえでできます。働きに出ている入所者もいます。介護をする施設ではないため、生活の自由度は特別養護老人ホームより高いのがふつうです。

措置は一度決まったら変えられないものではありません。状態が変わって介護が重くなれば、市区町村と相談して特別養護老人ホームへ移る道があります。困りごとはまず生活相談員に伝えてください。

自分で申し込むものではない

ここは、市区町村が入所を決める形です。施設に直接申し込んで入るものではありません。

窓口は市区町村です。 本人や家族から相談することはできます。 地域包括支援センターに伝えれば、担当課へつないでもらえます。

環境の事情が理由になる

介護が必要かどうかだけでなく、家庭の事情や経済的な理由で、家で暮らすことが難しい場合が対象になります。

住むところがない、家族から適切な扱いを受けていない、収入が足りない。 介護度が低くても対象になることがあります。諦めずに相談してください。

介護が重くなったとき

この住まいは、介護そのものを担う施設として作られてはいません。重くなると、別の施設へ移ることがあります。

介護に対応する形を備えているところもあります。 どうなるのかを、担当課に確かめてください。移るときも、市区町村が関わります。

家族がいると入れませんか。
家族がいることだけを理由に断られるわけではありません。家族と同居できない事情、援助を受けられない事情があれば対象になります。虐待から離す目的で措置される場合もあります。
本人が嫌がっている場合はどうなりますか。
措置は本人の同意を前提に進めるのが原則です。ただし虐待などで本人の生命や身体に危険がある場合は、同意が得られなくても市区町村が措置することがあります。
施設を自分で選べますか。
希望は伝えられますが、決めるのは市区町村です。空き状況と地域の事情で決まります。
入所したあと、家に戻れますか。
戻れます。事情が変わって自宅で暮らせるようになれば、措置を解除して退所できます。担当課に相談してください。

介護老人福祉施設の数を、掲載データから確かめる

介護老人福祉施設が全国にどれくらいあるかというと、当サイトの掲載で8,526件です。65歳以上1万人あたりにすると全国で2.4件です。定員が分かっている3,909件では、まんなかの定員が70人でした。運営しているのは5,329の法人です。

65歳以上1万人あたりで見ると、いちばん多いのは島根県(4.0件)、いちばん少ないのは愛知県(1.6件)です。同じ国の中で2.5倍のひらきがあります。全国の平均は2.4件なので、島根県は平均の1.7倍にあたります。

掲載があるのは全国1,892市区町村のうち1,774市区町村で、118の市区町村には1件もありません。制度として使えることと、住んでいる場所で実際に選べることは別だ、ということです。お住まいの市区町村に何件あるかは、当サイトの市区町村ページで確かめられます。

この節の数字は、当サイトが掲載している介護老人福祉施設を数えたものです。もとになっているのは厚生労働省「介護サービス情報公表システム」のオープンデータと、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」の年齢階級別人口です。どちらも更新のたびに、この数字も変わります。

この記事の出典

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