食べられなくなったとき。胃ろうを勧められたら考えること
突然その場で判断を求められることが多く、そのときには落ち着いて考える余裕がありません。中身だけでも先に知っておくと違います。
選択肢は一つではない
| 方法 | 中身 | 主な負担 |
|---|---|---|
| 胃ろう | おなかに開けた口から胃へ直接入れる | 手術が要る。管理と交換が要る |
| 鼻からの管 | 鼻から胃まで管を通す | 不快感が強く、抜いてしまうことがある |
| 点滴(末梢・中心静脈) | 血管から水分と栄養を入れる | 入れられる栄養に限りがある |
| 口から食べ続ける | 形や量を工夫して食べる | 誤嚥の危険が残る |
どれを選んでも「これで安心」にはなりません。 胃ろうにしても誤嚥性肺炎は起こりえます。それぞれの利点と負担を並べて、その人にとってどうかを考えることになります。
確かめておくこと
- 一時的なものか、長く続く見込みか(回復して外せる場合もある)
- それによって本人の苦痛が減るのか、増えるのか
- 入れたあと、どこで暮らせるのか(自宅、施設、病院)
- 受け入れてもらえる施設が限られないか
- 本人が以前どう言っていたか
決め方の手順
国が示している考え方では、本人の意思がいちばんの拠りどころです。本人が決められない場合は、家族などが本人の意思を推し量り、医療・ケアのチームと繰り返し話し合って決めることとされています。
一人で決めないでください。 医師、看護師、ケアマネジャー、他の家族を巻き込んで、話し合った経過を残します。経過が残っていることが、あとで自分を支えます。
説明で聞き落としやすいところ
説明の場では、方法そのものの話に時間が使われます。そのあとの暮らしがどうなるかは、こちらから聞かないと出てこないことがあります。
一日に何回、何分かかるのか。誰がやるのか。入浴や外出はできるのか。「家に帰ってから、誰がその手当てをするのか」を必ず聞いてください。 家族がやるのか、訪問看護が来るのか、それによって決め方が変わります。
帰る先が狭まることがある
医療の手当てが続く人を受け入れられる施設は限られます。方法によっては、いま申し込んでいる先が受けられなくなることもあります。
決める前に、ケアマネジャーと相談員に「この状態で行ける先はどこか」を確かめてください。 地域によって受け入れの幅は違います。この記事では書ききれないので、お住まいの市区町村の事業所を見て、担当者と一緒に当たってください。
家族の間で割れたとき
ふだん介護をしている人と、遠くに住んでいる人とで意見が分かれることがあります。近くにいる人ほど負担を知っていて、遠くにいる人ほど「できることは全部してほしい」と言いがちです。
どちらが正しいという話ではありません。 立っている場所が違うので、見えているものが違うだけです。話し合いの場に医療と介護の担当者を入れて、家族だけで向き合わない形にしてください。 第三者がいると、話が人の非難に流れにくくなります。
決めたあとも、変えてよい
一度決めた方針を、後から見直してはいけないという決まりはありません。国が示している考え方も、状況が変われば繰り返し話し合うことを前提にしています。
「あのとき決めたから」で縛られないでください。 体の状態も、本人の気持ちも、家族が続けられる範囲も変わります。節目ごとに、担当している人たちと話し直せます。
一度始めたら戻せない、とは限らない
始めたら二度と口から食べられない、と思い込んでいる家族がいます。状態が戻れば、口からの食事に戻る人もいます。
医師にどういう見通しかを聞いてください。 一時的に休ませる目的で使う場合と、長く続ける場合では、意味が違います。 そこを混ぜて考えると、判断を誤ります。
家族の間で、意見が割れる
同居している家族と、離れている家族で、考えが違うことがよくあります。日々を見ている人と、たまに会う人では、見えているものが違います。
割れたまま進めると、後で必ず責められます。 医師の説明を、全員が同じ場で聞いてください。都合が合わなければ、記録を共有する。
介護の体制が変わる
手当てが必要になれば、家で見る場合も、施設で見る場合も、体制の組み直しが要ります。受け入れられる施設が限られることがあります。
訪問看護、家族への手技の指導、物品の手配。 ケアマネジャーに早く伝えてください。決めた後で相談すると、行き先が見つからないことがあります。
本人が何を望んでいたか
判断できない状態になってから決めることが多く、本人の考えを確かめられません。
元気なうちに聞いておくことが、唯一の備えです。 決めておかなければ、家族が背負います。どちらを選んでも、迷いは残ります。 その迷いを軽くするのが、事前の話し合いです。
- その場で決めなければなりませんか。
- 緊急でなければ、持ち帰って考えたいと伝えて構いません。「いつまでに決める必要があるか」「決めない場合に何が起きるか」を医師に確かめてください。
- 断ると見捨てることになりますか。
- なりません。口から食べられる範囲で食べる、点滴で水分を補う、苦痛を和らげる、といった手当ては続きます。何もしなくなるわけではないことを、医師に確かめてください。
数えてみると、訪問看護の多い地域と少ない地域
訪問看護は、当サイトの掲載で18,283件あります。65歳以上1万人あたりにすると全国で5.1件です。定員が分かっている4,521件では、まんなかの定員が50人でした。運営しているのは13,420の法人です。
65歳以上の人数で割って多い順に並べると、上から大阪府・福岡県・沖縄県。少ないほうは新潟県・山形県・茨城県の順になります。件数そのものの順位とは、まるで違う顔ぶれになります。件数で並べると人口の多い都道府県が上に来るだけで、その地域が手厚いかどうかは分からないためです。
掲載があるのは全国1,892市区町村のうち1,523市区町村で、369の市区町村には1件もありません。制度として使えることと、住んでいる場所で実際に選べることは別だ、ということです。お住まいの市区町村に何件あるかは、当サイトの市区町村ページで確かめられます。
この記事の出典
- 国立長寿医療研究センター「胃ろう」を勧められた時にどのように考えたらよいですか?2026-08-22 確認
- 厚生労働省人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドラインPDF2026-08-22 確認
- 国立長寿医療研究センター食事中にむせませんか?2026-08-22 確認
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